講座 臨床政治学第7巻
『激動するアジアの政治経済』
編者:丹羽 文生
判型:B6判・上製・312ページ
発行日 2017年9月30日
ISBN:9784904180808
定価:2,700円+税
明治の文人である岡倉天心は、その著書『東洋の理想』の冒頭で「アジアは一つ」という有名な成句を残した。西洋の先進文明が疾風怒濤の如く日本に押し寄せる中、岡倉は敢然と東洋の文化的、精神的価値を称揚したのである。当時の国際社会は弱肉強食の原理が支配していた。アジア諸国が次々と欧米諸国に屈服し、その植民地となって隷従させられ、凄絶な苦しみを味わった。そういう中において登場した「アジアは一つ」とのフレーズは、欧米諸国への対抗心を燃え上がらせ、日本の独立心を刺激した。言わば日本とアジア諸国の自立促進のための理念的意味合いがあったのである。―中略―
政治・経済体制も隔たりが大きく、共通性に欠く。しかも、日本と中国、韓国との間には歴史問題、領土問題のような政治的課題が数多く横たわり、しばしば摩擦が生じ、時に国家主権の根幹を揺るがすほどの衝突を惹き起こすこともある。だが、これらの国々は、日本にとって言わば隣人であり、引っ越すことは不可能である。しかも、グローバル化が加速する中、日本とアジア諸国との交易は今後、さらに増大していくことが予想される。
序文より
目 次
序文 /ⅰ
第一章 習近平政権下での中国共産党の党内闘争 / 澁谷 司
第一節 はじめに / 1
第二節 習近平政権による軍改編と北朝鮮 / 2
第三節 毛沢東型「皇帝」を目指す習近平主席 / 5
第四節 中国「文革」開始五〇周年のアイロニー / 10
第五節 中国共産党「一九大」に向けての〝死闘〟 / 14
第六節 香港での中国共産党の党内闘争 / 18
第七節 中国共産党第一八期六中全会の開催 / 22
第八節 習近平主席は一体何を目指しているのか? / 25
第九節 国内五つの敵対勢力に立ち向かう習近平政権 / 28
第十節 北京での退役軍人と現役警察官の抗議デモ / 32
第十一節 事実を述べただけで糾弾される「第二文革」 / 37
第十二節 最高人民法院院長の「司法の独立」否定発言 / 42
第十三節 中国経済の見通し / 46
第十四節 むすびにかえて―鄧小平の〝党政分離〟論を否定した王岐山 / 48
第二章 蔡英文政権と今後の日台関係 / 丹羽 文生
第一節 はじめに / 53
第二節 低迷する支持率 / 54
第三節 日本重視のスタンス / 56
第四節 「日本台湾交流協会」への名称変更と総務副大臣の訪台 / 60
第五節 高まる台湾の親日度 / 64
第六節 活発化する民間レベルにおける日台交流 / 69
第七節 日本版「台湾関係法」について / 73
第八節 おわりに / 75
第三章 韓国における政治体制の変化と集権型大統領制改正の動き / 梅田 皓士
第一節 はじめに / 77
第二節 韓国における政治体制の特徴と変更の過程 / 83
第三節 韓国における政治体制変更の議論 / 93
第四節 おわりに / 100
第四章 北朝鮮における「通常の時代」と「例外の時代」
―「例外の時代」としての金正日体制― / 梅田 皓士
第一節 はじめに / 105
第二節 本章の視点としての「通常の時代」と「例外の時代」 / 111
第三節 北朝鮮における政治体制の変遷 / 115
第四節 北朝鮮における「通常の時代」と「例外の時代」 / 123
第五節 おわりに / 130
第五章 CLM諸国とタイ・ベトナムとの貿易依存関係の変化 / 茂木 創
第一節 はじめに / 137
第二節 タイ・ベトナムとCLM諸国 / 138
第三節 CLM諸国の貿易 / 146
第四節 CLM諸国とタイ・ベトナム / 157
第五節 結語と残された課題 / 164
第六章 周辺事態法から重要影響事態法へ
―地域の安全保障における日本国内法の展開― / 山中倫太郞
第一節 はじめに / 167
第二節 周辺事態法から / 169
第三節 重要影響事態法へ / 192
第四節 おわりに / 203
第七章 インドの文化外交
― ナレンドラ・モディ政権による「宗教」と「伝統」の強調 ― / 笠井 亮平
第一節 はじめに / 209
第二節 首脳外交における文化の強調 / 212
第三節 観光・学術交流・経済における新たな取り組み / 218
第四節 グローバルな展開―「国際ヨガの日」制定をめぐる動向 / 222
第四節 おわりに / 226
第八章 トランプ政権の対アジア外交―日本側の社説を手がかりに― / 浅野 一弘
第一節 はじめに / 231
第二節 社説のなかにみるトランプ政権のアジア政策 / 235
第三節 結び / 258
第九章 安倍政権の対アジア外交 /小枝 義人
第一節 ASEANとの紐帯 / 261
第二節 一年でASEAN全加盟国訪問 / 266
第三節 台湾の存在 / 275
第四節 安倍政権と日台関係 / 280
第五節 おわりに 283
あとがき / 285
編著者紹介 / 287
索引 / 288
*編著者紹介
丹羽文生 東海大学大学院政治学研究科博士課程後期単位取得満期退学。博士(安全保障)。現在、拓殖大学海外事情研究所准教授。専攻=政治学。主要業績=『日中国交正常化と台湾―焦燥と苦悶の政治決断』(北樹出版、二〇一二年)他、多数。
〈執筆者および担当紹介〉
丹羽文生 拓殖大学海外事情研究所准教授・・・・・・・・・・・(序文、第二章)
澁谷 司 拓殖大学海外事情研究所教授・・・・・・・・・・・・・・・(第一章)
梅田皓士 日本臨床政治研究所研究員・・・・・・・・・・・・(第三章、第四章)
茂木 創 拓殖大学政経学部准教授・・・・・・・・・・・・・・・・・(第五章)
山中倫太郎 防衛大学校公共政策学科兼総合安全保障研究科准教授・・・・(第六章)
笠井亮平 岐阜女子大学南アジア研究センター特別研究員・・・・・・・(第七章)
浅野一弘 札幌大学法学部教授・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(第八章)
小枝義人 千葉科学大学薬学部教授・・・・・・・・・・・・・・・・・(第九章)
藤本一美 専修大学名誉教授・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(あとがき)
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