ポスト冷戦期における
ロシアの安全保障外交
著者:小泉 直美
判型:A5判・並製・260ページ
発行日 2017年9月10日
ISBN:9784904180815
定価:2,700円+税
G2の冷戦が終結し、ポスト冷戦期も終わろうとしている今、我々が目にしているものはG8でもG20でもない、Gゼロ(イアン・ブレマー)の世界とも言われている。この世界には正義は複数存在する。平和とは単一の正義が普遍化した結果として常態化するものではなく、実は複数の正義の極めて不安定な共存によってでしか成り立ち得なくなっている。視界不良の国際社会でロシアの正義は意外にオーソドックスで明快である。ロシアと戦略的に付き合う可能性と必要は、以前にもまして大きくなっていると言える。
本書 終章より
《目 次》
序 章 / 7
(1)冷戦終結とポスト冷戦期のロシア / 8 (2)プーチン政権における民主化の後退 / 11
(3)ネオ帝国主義 / 13
《第1部》
第1章 外交政策決定システム・外交アイデアと、その変遷 / 17
1.制度 / 17
(1)大統領と首相 / 17 (2)外務省 / 19 (3)軍・治安関係機関 / 19 (4)議会・政党・世論 / 20
(5)国家コーポレーションと私的ビジネス / 21 (6)その他:マスコミ・シンクタンク / 22
2.外交アイデア / 23
(1)リベラル / 24 (2)ナショナリスト / 25 (3)リアリスト / 26 (4)新しい傾向 / 28
3.ロシア外交の変遷 / 29
(1)エリツィン時代 / 29 (2)プーチン外交 / 32
結語に代えて / 35
第2章 ロシアにおける政軍関係 / 39
はじめに / 39
1.分析の視座 / 39
2.行政改革 / 42
(1)国防省の掌握 / 42 (2)参謀本部の位置付け / 45
3.軍の利益充足 / 47
(1)軍事費の増加と装備調達 / 47 (2)社会保障 / 48
4.脅威認識の変更 / 49
(1)経緯 / 50 (2)ニュールック軍改革開始(2008年)後 / 51
おわりに / 52
第3章 プーチンの軍改革 / 57
はじめに / 57
1.改革の開始 / 58
(1)セルジュコフ以前の改革 / 58 (2)セルジュコフの任命 / 60 (3)参謀総長の交代 / 61
2.セルジュコフ改革 / 62
(1)ジョージア戦争と改革方針の発表 / 62 (2)セルジュコフのやり方と軍の反発 / 64
(3)マカロフのやり方とそれへの反発 / 66
3.セルジュコフ解任後 / 68
(1)解任の背景 / 68 (2)新体制:ショイグ・ゲラシモフ・チーム / 69
(3)戻されたこととさらに進められたこと / 70 (4)残された課題 / 72
結論 / 73
《第 2 部》
第4章 冷戦終結とロシアの対欧州安全保障政策 / 79
はじめに / 79
1.「冷戦講和」 / 82
(1)ゴルバチョフ就任時の戦略状況 / 82 (2)INF(中距離核戦力全廃)条約調印 / 83
(3)CFE(欧州通常戦力)条約調印 / 83 (4)START(戦略兵器削減条約)調印 / 84
2.その後の「冷戦講和」の行方とロシアの不満 / 86
(1)通常戦力バランス:NATO拡大とCFE条約 / 86 (2)戦略核バランス:ミサイル防衛と精密誘導兵器 / 87
(3)米国による民主化支援と国連軽視 / 89
3.ロシアの対抗策 / 90
(1)権威主義体制の強化 / 90 (2)ミュンヘン演説と軍改革 / 91
(3)ジョージア戦争と二分離主義地域の「独立」/ 92 (4)ウクライナ政変とクリミア併合 / 94
結論 / 96
第5章 プーチンの核兵器政策 / 101
はじめに / 101
1.核ドクトリン / 103
(1)1993年の軍事ドクトリン / 103
(2)1997年国家安全保障概念と1998年の『国家政策の基礎(概念)』/ 104
(3)2000年国家安全保障概念と軍事ドクトリン / 106 (4)2003年白書 / 107
(5)2010年の軍事ドクトリン / 108
2.核をめぐるロシアの行動 / 108
(1)連邦崩壊後の混乱の収拾―START Ⅱ体制への対応 / 108 (2)コソボ紛争の影響 / 110
(3)ブッシュ政権への対応―ABM条約廃棄とイラク戦争 / 111 (4)2007~08年の米ロ関係の悪化 / 112
(5)オバマ政権と米ロ関係のリセット―新STARTの調印 / 113
(6)リセットの失敗とロシアの国家装備調達計画 / 114
結論 / 116
第6章 ロシアの核不拡散政策 / 123
はじめに / 123
1.核兵器及び核関連物質の国内管理 / 125
(1)米国等の支援 / 125 (2)国内管理の自助努力 / 128 (3)問題点 / 128
2.輸出管理政策 / 129
(1)国際輸出管理レジームへの加入 / 129 (2)国内輸出管理システムの確立 / 131
3.対イラン外交と国内原子力産業政策 / 133
(1)冷戦崩壊からプーチン就任当初まで / 133
(2)プーチン政権第一・二期の政策:3レベルの利害の調整 / 134
(3)メドベージェフ政権と対米協調 / 136 (4)プーチン政権第三期の政策:新たな均衡点を求めて / 138
おわりに / 140
第7章 ロシアの南の脅威と南方政策 / 145
はじめに / 145
1.エリツィン時代(1990年代)の南方政策 / 147
(1)ソ連邦の崩壊 / 147 (2)旧ソ連地域に対する安全保障政策 / 148 (3)チェチェン紛争/ 149
2.プーチン大統領就任と南の脅威 / 151
(1)中央アジア / 151 (2)カフカス:第2次チェチェン紛争 / 156
3.プーチン第三期の対南政策 / 157
(1)中央アジア / 157 (2)カフカスからシリアへ / 163
結論 / 165
第8章 極東地方とロシアの対中政策 / 171
はじめに / 171
1.極東の問題 / 171
(1)極東の劣化 / 171 (2)対中格差 / 173 (3)脅威認識 / 174
2.ロ中関係の推移 / 175
(1)エリツィン政権期(1990年代) / 176 (2)プーチン政権初期(1999年8月~2007年2月)/ 177
(3)2007年2月以降から2011年夏まで / 179 (4)2011夏以降 / 181
3.中国に対する備え / 184
(1)極東開発 / 184 (2)軍事力整備 / 186 (3)対インド政策 / 188
結論 / 190
第9章 ロシアの北朝鮮政策 / 195
はじめに / 195
1.北朝鮮の核開発とソ連・ロシアの関わり / 197
(1)ソ連時代 / 197 (2)エリツィン政権の北朝鮮政策 / 199
(3)プーチンの大統領就任と3回の首脳会談 / 200
2.6者協議におけるロシアの役割 / 203
(1)第二次核危機の発生と6者協議 / 203 (2)6者協議の開始 / 205 (3)6者協議の破綻 / 206
3.6者協議停止後のロシアの動き / 208
(1)ロシアの再接近 / 208 (2)金正恩政権の誕生とプーチンの東方シフト外交 / 210
(3)「水爆」実験以後のロシアの対応 / 212
結論 / 214
第10章 ロシアの対日政策 / 219
はじめに / 219
1.前史 / 220
(1)問題の所在 / 220 (2)交渉の経緯/ 221 (3)プーチンの対日対応/ 223
2.北方領土の開発と軍備強化 / 225
(1)メドベージェフの国後訪問と開発計画/ 225 (2)再軍備/ 227
3.ロシアによる北方領土開発の理由 / 228
(1)ナショナリズム / 228 (2)東方シフト外交における日本/ 230 (3)北方領土の戦略的意義 / 231
(4)北極海の防衛 / 233
結論 / 236
終 章 / 241
参考文献 / 245
索 引
執筆者紹介
小泉 直美(こいずみ なおみ)
1954年 東京都に生まれる。
1977年 東京大学文学部卒業。
1983年 米国オハイオ州立マイアミ大学政治科学部修士課程卒業。
1987年 (財)日本国際問題研究所研究員。
1993年 防衛大学校 国際関係学科助(准)教授 現在に至る。
専門 ロシア地域研究
著作 「ソ連軍縮政策の針路 1979~84年:安全保障問題をめぐるソ連国内政治」『国際政治』第80号、1985年9月。
「米ソ冷戦終結のプロセス:ロシア地域研究の視点から」『国際政治』第189号、2017年9月。
TEL: 03-6260-7177
FAX: 03-6260-7178
10:00〜17:00
土・日・祝日は休業