現代国際関係学叢書第5巻

    『国際関係の争点』

 

編・著者:宮脇 昇

判型:A5判・並製・322ページ

発行日:2019518

ISBN9784904180976

定価:2,700円+税

 

叢書とは即ち知の俯瞰であり、各巻の連なりをもって全体像を提示する。本叢書企画開始の号砲からの長い月日は、浅学の編者に叢書の重みを感じさせてきた。同時に、編者の任を務めている間、骸骨を賜いて、卒伍に帰ることができればという想いは深まってきた。なぜならば、国際関係学において争点化という新しい視座は、今後の考究にまつところが多いためである。しかし、各方面からの御叱正は覚悟しつつ、執筆陣の協力を得て争点化に挑戦することの意義をここに問うこととしたい。

 

誤解をおそれずに記せば、一方で本叢書1は、すでに国連等の国際組織からみたアジェンダやレジームの争点領域に豊穣な知見でアプローチしている。他方で本巻は、争点が主体を選びとり、いかに主体に影響を与え、争点自体が変化するかという創見で編集を試みた。読者諸氏にとって、両巻あわせて全体像への道標になれば望外の喜びである。

                      あとがき より

 

《目 次》 

現代国際関係学叢書刊行にあたって /i

はしがき /1

第1部 争点化の経路と統合の過程

第1章 争点化の新しい方法論/宮脇 昇

1.アジェンダ設定と争点化/7

2.争点化のシナリオ/10

3.争点化の推進主体(issue-setter)としての大国 /18

4.国家間連合、NGO、ネットワーク等による争点化/20

5.結びにかえて /22

第2章 安全保障と通商のリンケージ ― 沖縄返還における「糸と縄」の取引 ―/豊田 祐基子 我部 政明

1.はじめに/27

2.繊維問題とは何か/29

3.返還と繊維の「取引」の模索/35

4.おわりに/44

3章 国内政治における経済的自立の争点化—— インドネシアにおける開発モデルの競合 ——/川村 晃一

1.はじめに/52

2.インドネシアにおける「開発モデル」の相克/54

3.国際的冷戦体制と「開発モデル」をめぐる争点政治/56

4.スハルト体制における「開発政策」をめぐる争点政治と制度/61

5.民主化と開発モデルをめぐる争点政治/72

6.おわりに/77

第4章 マイノリティの権利と「争点化」― 朝鮮高校学費支援問題を例として―/玉井 雅隆

1.はじめに― 問題の所在/83

2.国際法における「マイノリティ」/84

3.我が国における「マイノリティ・イシュー」/86

4.朝鮮学校教育無償化問題と「教育を受ける権利」/86

5.マイノリティと「教育」― 欧州の事例から/88

6.おわりに/92 

第2部 経済的側面の争点化・非争点化

第5章 中国の台頭で変化する国際通貨体制―基軸通貨米ドルの将来と日本の対応―/西村 陽造

1.はじめに/101

2.米国の相対的衰退/101

3.中国の台頭/107

4.欧州通貨統合の教訓/112

5.存在感が後退する日本の課題/117

第6章 開発援助における民主化の争点化・非争点化/杉浦 功一

1.はじめに/123

2.冷戦時代から1990年代までの開発援助における

民主化の争点化・非争点化/125

3.21世紀の開発援助における

民主化の争点化・非争点化/135

4.結論/142

第7章 争点としての石油・ガス/上久保 誠人

1.はじめに/148

2.米国が築いてきた第2次世界大戦後の国際社会体制/151

3.石油、ガスを巡る争点の歴史/153

4.「シェール革命」と米国の変化/158

5.「アメリカ・ファースト」と「生存圏」を争う国際社会へ/163

第3部 新たな争点の形成

第8章 地球環境の領域における争点化― 地球環境ガバナンスの視点から ―/横田 匡紀

1.問題の所在/173

2.地球環境ガバナンス/174

3.地球環境ガバナンスの展開/176

4.地球温暖化問題への対応/180

5.気候変動ガバナンス/181

6.生物多様性と化学物質管理/186

7.持続可能な発展のグローバル・ガバナンスへの展望/189

第9章 たばこ規制のグローバル・ガバナンス― グローバル・ヘルスの争点化 ―/福田 八寿絵

1.はじめに/196

2.たばこ問題とグローバル・ヘルス/196

3.たばこの健康への脅威の認識と

国際的な規制枠組みの交渉過程/197

4.たばこ規制枠組み条約の実施と課題/200

5.たばこ規制と持続可能な開発目標(SDGs

― グローバ・ルヘルスの達成に向け たたばこ規制ガバナンスの今後 ―/206

6.おわりに/209

10章 対人地雷、クラスター爆弾の包括的禁止実現までの道のりと残る課題/清水 俊弘

1.はじめに/215

2.対人地雷の包括的禁止を目指して/217

3.クラスター爆弾の禁止/227

4.おわりに/247

11章 トルコにおける紛争と人口移動に関する歴史的争点化/松長 昭

1.はじめに/254

2.アルメニア人問題と強制移住/257

3.トルコ共和国の人口移動/261

4.シリア人難民の流入とロヒンギャ難民支援/268

5.おわりに/271

12章 米国外交政策の争点形成モデル ― 規範形成型と脅威形成型の非国家主体 ―/清嶋 友喜         

1.はじめに/275

2.研究の背景/277

3.問題意識 ― 武装非国家主体を組み込むトランスナショナル・リレーションズ研究 ―/280

4.ディアスポラ政治の登場/281

5.米国における「内政問題」の争点化の契機/283

6.規範形成型と脅威形成型の非国家主体/288

7.おわりに/292

あとがき/300

編者・執筆者紹介/301

事項索引/302

人名索引/308

編者・執筆者紹介

編者

はしがき 第1章 あとがき 宮脇 昇   立命館大学教授(国際関係学) 

執筆者

第2章 豊田 祐基子 共同通信外信部

我部 政明  琉球大学教授(政治学、国際関係論)

第3章 川村 晃一  アジア経済研究所主任研究員(比較政治学、インドネシア政治)

第4章 玉井 雅隆  東北公益文化大学准教授(国際関係学、多文化共生論)

第5章 西村 陽造  立命館大学教授(金融論、国際金融論、国際経済学)

第6章 杉浦 功一  和洋女子大学教授(国際関係論、政治学)

第7章 上久保 誠人 立命館大学教授(政策科学、政治学、国際政治経済学、現代日本政治)

第8章 横田 匡紀  東京理科大学准教授(政治学、国際関係論、環境政策)

第9章 福田 八寿絵 鈴鹿医療科学大学薬学部薬学科教授 (医療社会学、医療系薬学、公衆衛生学・健康科学)

10章 清水 俊弘  獨協大学非常勤講師(NGO論)

11章 松長 昭   現代イスラム研究センター理事(トルコ政治史、中東地域研究)

12章 清嶋 友喜  CESNA研究員、立命館大学大学院政策科学研究科博士後期課程

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